JAIFの交通支援

セクター概要 / JAIFの交通支援

2023年6月30日
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背景

ASEANの交通セクターは、同地域の経済成長、統合、そして発展を推進する上で極めて重要な役割を果たしている。6億6,000万人以上の人々が暮らすASEAN地域では、効率的で信頼性が高く、持続可能な交通インフラの整備が、これまで以上に必要となっている。しかし島しょ国や内陸国を含む多様な地理的条件を持つASEANでは、シームレスな交通ネットワークを確立する上で様々な課題がある。

こうした課題に対処するために、ASEANは包括的な戦略を策定し、日本政府との連携を通じて、ASEAN地域における交通の接続性と効率を高める取り組みを進めている。「日ASEAN交通連携(AJTP)」は、ASEAN地域の交通セクターを改善していく上での、日本とASEANの協力的な取り組みの基盤となっている。2003年に設立された日ASEAN交通連携(AJTP)は、持続可能で効率的かつ安全な交通システムの推進を目指しており、ASEAN地域における能力向上、技術移転、インフラ整備に大きく貢献してきた。具体的には、「全世界衛星航法システム(GNSS)実施計画訓練(GIPTA)」プロジェクトや、海洋安全性の向上、交通管理のための先進技術の導入、エネルギー効率の高い輸送システムの促進を目指した、VTS(船舶通航サービス)関連のプロジェクトなどだ。これらの取り組みを通じて、日ASEAN交通連携(AJTP)はASEANの交通セクターの能力向上に大きく貢献するとともに、日本とASEANの強固な協力関係を促進している。

出典:https://www.ajtpweb.org/ajtp/ajtpprojects/index.html

支援分野と 主な貢献

「ブルネイ・アクションプラン(ASEAN戦略的交通計画)2011-2015」の成功を受けてASEANは、「クアラルンプール交通戦略計画(ASEAN交通戦略計画)2016-2025」を採択し、域内の交通に関する課題に引き続き取り組んでいる。クアラルンプール交通戦略計画(KLTSP)は、それぞれの重要分野で設定された主要目標を指針としている。

これらの目標を支援するため、日・ASEAN統合基金(JAIF)の資金提供のもと、12件のプロジェクトが実施され、ASEANの交通セクターの大きな発展に貢献した。以下は、クアラルンプール交通戦略計画(KLTSP)の戦略目標に沿った、JAIFプロジェクトの主な成果である。

交通分野におけるJAIFのフラグシッププロジェクト

JAIFは、2016年から2023年まで実施されたVTS(船舶通航サービス)管制官訓練プログラムへの支援を通じて、ASEAN地域における海上安全とセキュリティの強化へのコミットメントを示した。マレーシアには、VTSシミュレーターを完備した研修施設である海事局海事訓練センター(MATRAIN)が設立された。同施設では、 国際航路標識協会(IALA)のモデルコースに基づく訓練を毎年実施され、ASEAN加盟全10カ国のVTSオペレーターが地域の重要かつ多忙な水路を適切に管理している。

Khairul Anwar Bin Mohd Nor氏(マレーシア海洋局 海事補佐官)

「前職はVTSオペレーターでした。VTSプログラムに参加することで、海上交通の分野でキャリアアップする機会を得て、国際航路標識協会(IALA)認定の能力証明書を取得することができました。」

船舶との通信や海事用語の理解は、Khairul氏にとって課題だった。「日・ASEAN統合基金(JAIF)の支援を受け、日本航路標識協会(JANA)と海事局海事訓練センター(MATRAIN)の協力で実施されたVTSプログラムでは、船舶用語や海図作業のプロット方法、通信機器の使い方などを学びました」と同氏は語った。

Khairul氏は、JAIFの支援により実施された訓練で得た技術で、安全な航行を確保している

©︎JAIFマネージメントチーム(JMT)

Caroline Veronica氏(インドネシア航行総局 海上通信担当官)

「これまでにもVTS関連の研修には何度か参加してきましたが、今回参加したVTS管制官育成のためのASEAN地域訓練センター(ARTV)の研修はVTSについての一連の知識を学ぶことができ、今までで最も包括的な研修でした。」

ASEAN諸国では、VTSオペレーターのための現地の研修が実施されているものの、提供される研修はIALA基準に基づく国際的に認められたものではない。Caroline氏は「国際的に認められた資格を持つことは、特に公務員としてのキャリア形成に付加価値を与えてくれます。また、国際的な委員会に参加することもできます。」と熱く語った。

ASEANの代表18人の中で、Caroline氏(左から7人目)はASEAN地域訓練センター
(ARTV)のVTSオペレーター研修に参加した女性2人のうちの1人であった

© 一般財団法人 日本航路標識協会(JANA)

研修を無事終え、IALAの国際認定資格を取得したCaroline氏は、副局長をより効果的にサポートできるようになったと自信に満ち溢れている。「今はバタム島のVTSシミュレーターの開発に注力しています。完成すれば、研修で得た知識をインドネシアのVTSオペレーターに伝えることができます。」と同氏は語った。Caroline氏のストーリーは受益者の声で閲覧可能。

現在、Khairul氏とCaroline氏はIALA認定のVTSオペレーターであり、両者はIALA認定のモデルコースに基づくVTSプログラムが、過去に受けたあらゆるトレーニングと一線を画していることを強調している。

さらにJAIFは、現在進行中の「ASEANにおける全世界衛星航法システム(GNSS)実施計画訓練(GIPTA 2.0)」を通じて、継続してASEANの交通部門を支援している。同プロジェクトは、ASEAN全体で全世界衛星航法システム(GNSS)の導入・運用計画を策定・実施する責任者や管理者を対象に訓練を実施することを目的としている。第2フェーズでは、予定されているシンポジウムやセミナーに加え、実際の運用システムや機器の現地視察を含む 、実践的な実地研修が日本で実施される予定。


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