ASEAN事務局へのアタッチメント・プログラムを通じたASEAN統合の推進
29 September 2019
JAIFマネジメントチーム
ASEANの統合と共同体構築において、能力開発のイニシアティブは極めて重要である。カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム(CLMV)のASEAN事務局(ASEC)職員派遣プログラム(以下、「アタッチメント・プログラム」)もその一つである。1999年から続くこのプログラムは、ASEAN統合イニシアティブ(IAI) のビジョンである「カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム(CLMV諸国)がASEAN共同体の目標実現に向けたASEAN全体の目標やコミットメントを達成し、開発格差の是正に貢献することを支援する」ことを目的としている。また、同プロジェクトは「統一された方法で進める」という原則を遵守している。
ASEAN統合イニシアティブ(IAI)のフラグシッププロジェクトであるアタッチメント・プログラムは、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム(CLMV諸国)とその他のASEAN加盟国との間の能力差、特にASEAN政治・安全保障共同体(APSC)、ASEAN経済共同体(AEC)、ASEAN社会・文化共同体(ASCC)の柱に関わる省庁の行政実務能力の差を改善することに貢献している。このプログラムを卒業した、CLMV諸国の以下4人の政府関係者1が証明しているように、このプログラムはあくまで目的を達成するための手段であり、プログラムの実施そのものが目的ではない。
© JAIFマネージメントチーム
ラオスのEkkaphab Phanthavong大使(アタッチメント・プログラム 第8期外務省職員、2006~2007年)
「ラオスの職員の中には、職場で非常に優秀な成果をあげていても、本プログラムに参加する機会を得られない人もいます」と、Ekkaphab大使は語った。本プログラムのような、CLMV諸国の人材育成に投資することで、日本とASEANは長期的により大きな利益を得ることができると大使は考える。「私たちが本プログラムを通じて得た知識・経験を使って、日本とASEANの協力関係のさらなる強化のために、相互に働きかけることができます」と、元アタッチメント・オフィサーである同氏は付け加えた。
アタッチメント・プログラムに参加して10年以上が経った今、Ekkaphab大使は「この経験が自分の人生を変えるきっかけになった」と誇らしげに振り返る。1996年に外務省に入省して以来、ASEAN関連に特化した外交活動を続けてきた。早い段階でキャリアに役立つスキルを多く得たEkkaphab大使は、本プログラムに参加した他のラオス政府関係者に共通することとして、アタッチメント・オフィサーとしての経験から得た3つの重要な事柄を挙げた:1)英語の上達、特に彼の時代は、ラオス人職員が英語を学び、練習する機会が非常に限られていた 2)アタッチメントオフィサーとASEAN事務局、そしてアタッチメントオフィサーと外部パートナーとの人脈構築、これは特に政府職員にとって最も重要な無形財産である 3)仕事の進め方、得られた知識を各省庁へ持ち帰ることができたこと
「CLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)、特にラオスにとって、本プログラムは私たちがまさに必要としているものであり、新しい世代の職員にとっても、非常に有益であると感じています」 と大使は述べた。Ekkaphab Phanthavong大使は現在、ラオスのASEAN常駐代表を務めている。
© Hoang Quoc Trung氏
ベトナムのHoang Quoc Trung氏(アタッチメント・プログラム 第13期外務省職員、2014〜2015年)
ベトナム出身のアタッチメント・オフィサーは、地域的な背景を踏まえて活動する際に、「バランスの取れた視点」を持つことの大切さを学んだと語る。。「さまざまな実習の中で、ASEAN加盟国代表部や対話パートナーとの会合に加え、海外出張の際にメンターの直接指導があったのがとても良かったです」とTrungs氏は振り返る。また、アタッチメント・プログラム参加中に、日本の外交、特にASEANとの協力関係を深く理解することができ、日本への愛着も深まったという。
またTrungs氏は、アタッチメント・プログラムの主な活動のひとつである日本での研修を懐かしく思い出す。「重要なのは、プログラムの最後に初めて日本を訪れたとき、想像を超える大きな感動を覚えたことです。これは、2019〜2021年度の日本への赴任を申請する大きな動機となりました」とTrungs氏は加えた。実際、昨年2019年6月、同氏は在大阪ベトナム総領事館の領事として着任することとなった。「日ASEAN協力に関する理解、また本プログラムを通じて得た知識で、領事館での任期中も、日本とベトナム、そして日本とASEANの永続的な協力に貢献できると信じています。」Hoang Quoc Trung氏は、今回の赴任以前は、ベトナム外務省のASEAN担当官であった。
© Chhy Ratha氏
カンボジアのChhy Ratha氏(アタッチメント・プログラム 第2期経済/社会・文化関連省庁職員、2015〜2016年)
アタッチメント・プログラムの大半の時間は、一定期間ASEAN事務局に「所属」することになる。初期の参加者らは6ヶ月であったが、最近の参加者は1年間かけてプログラムを終了する。業務内容はさまざまだが、基本的にはASEANとASEAN事務局について学ぶことが目的である。そのためには、会議への出席から報告書の作成まで、さまざまな活動を行う必要がある。Ratha氏にとって、この点が、一番良い経験であったという。「社会福祉・女性・労働・移民労働課では、私に会議に出席する機会を与え、ASEAN事務局の一員として課の業務に参加できるよう働きかけてくれました。中でも、一人で業務に参加させてもらえたことが忘れられません」とRatha氏は語る。彼女はその経験を振り返り、当時一人での出張は初めての経験で、驚きの連続だったと話した。
アタッチメント・プログラムに参加する前、Ratha氏は、ASEANと省内の仕事は「少し遠い」という印象を持っていた。しかし、アタッチメント・プログラムを終えて1年後、国と地域の取り組みが連携していることを理解しただけでなく、自分が学んだことを部下に受け継いでいる。「アタッチメント・プログラム中に時間を無駄にしたり、努力を怠ったりすると、ASEAN事務局から利益や経験を持ち帰ることはできません。そのため、私はASEAN事務局から得られる能力向上と機会を重要視しています。上司や課の同僚に自らアプローチして、仕事をもらうのがよいでしょう」と部下に勧める。2016年に母国に戻った後、Chhy Ratha氏は職員から国際協力部・女性・ASEAN担当課長に昇進し、大臣補佐官も務めた。最近では、2019年半ばに、カンボジアの女性省国際協力局長に再び昇格した。
ミャンマーのHtet Htet Htoo氏(アタッチメント・プログラム 第3期経済/社会・文化関連省庁職員、2016〜2017年)
元アタッチメントオフィサーの指導を受け、アタッチメントプログラムの成果を目の当たりにしていたHtets氏は、参加する前から同プログラムの成果を体感していた。それが応募の動機だっただろうと彼女は振り返る。
社会人になって間もない頃、自分は社会性に欠けていたと、Htets氏は率直に語った。そしてアタッチメント・プログラムにやっとの思いで参加した際、自らの弱点を克服したいと感じ、そのためにASEAN事務局での研修中に与えられた多くの機会に感謝している。今彼女は、大きな自信を得ただけでなく、省内で仕事をする中で、プログラムで得た人脈をどのように生かすことができるかを考えられることに、感謝の念を抱いている。
© Institute of Diplomacy and Foreign Relations
このような仕事をするようになったのは、アタッチメント・プログラムで受けたマレーシアでの外交訓練. が大きかったという。Htets氏は国際貿易交渉や国際関係へ参加したことについて、「今では私の職務の一部となっており、研修で学んだことは非常に応用が利き、役に立っています」と述べた。Htet Htet Htoo氏は現在、ミャンマー投資・対外経済関係省の補佐官を務めている。
日本は、2002年の最初のASEAN統合イニシアティブ(IAI)作業計画、そして現在のASEAN統合イニシアティブ(IAI)作業計画III. の採択以来、一貫してASEAN統合イニシアティブ(IAI)を支援してきた。また、日・ASEAN統合基金(JAIF)を通じて、日本はアタッチメント・プログラムも一貫して支援してきた。現在までに、2001年以降の外務省職員(政治・安全保障共同体(APSC)関与)計15期生と、2013年以降の経済/社会・文化関連省庁職員 計4期生、合計88名の卒業生を輩出している。アタッチメント・プログラムは、CLMV各国の職員が地域のイニシアティブに参加し、ASEAN地域の任務を果たすための能力開発を続けている。外務省職員 第16期生と、経済/社会・文化関連省庁職員 第5期生は、2019年の最終四半期に開始される予定。
1 体験談は、それぞれのアタッチメント・オフィサーが参加した期に基づいて、古い順に並べられている。