ASEANの国営放送局、ASEAN関連コンテンツ開発で協力

29 September 2020

JAIFマネージメントチーム

ASEANは、そのビジョンである 「ASEAN: A Community of Opportunities for All(全ての人に機会が与えられるコミュニティ)」を実現するために、長年にわたって大きな発展を遂げてきた。しかし、ASEAN共同体形成の意味をより深く理解することは、依然として困難な課題である。ASEANの人々の日々の暮らしを垣間見ることができる興味深いコンテンツを作り出すことは、ASEAN共同体がもたらす利益と機会を広く伝えるための重要な手段となっている。

メディアの役割は、アイデンティティの形成やコミュニティの構築において、ますます重要視されてきている。ASEANはメディア、特に国営放送局とのパートナーシップによって、ASEANとコミュニティとの橋渡しをしている。しかしASEAN諸国の国営放送局は、それぞれの限界に直面し、課題を抱えている。彼らにとっては、ASEANに関連したコンテンツを制作することだけでなく、メディア従事者の能力を向上させることも課題となっている。

ラオス国営テレビ(LNTV)の制作クルーらは、「日ASEAN協力に関するドキュメンタリー番組の制作を通じた ASEAN域内放送事業者の能力向上プロジェクト(ASEAN50周年記念)」の一環として、「ASEAN Now and the Future – Connectivity and Economic Corridors」に関する一連のドキュメンタリー番組制作に関与した経験を振り返った。制作チームは、プロジェクトの成果は、出来上がったドキュメンタリー番組そのものだけではなく、その制作を通して得た経験だと語る。一連の経験が彼らにとってどのような意味を持ち、何を得たのかを聞いた。

サワンナケート県のダンサバン国際検問所からレポートするVilayvone Bouchaleurnphone氏

© ラオス国営テレビ (LNTV)

このドキュメンタリーの制作者兼レポーターであるVilayvone Bouchaleurnphone氏は、ラオス国営テレビ(LNTV)は以前にも別のプロジェクトでNHKインターナショナルと仕事1をしたことがあるが、このドキュメンタリー制作の経験を通じて、スタッフは新たな視点を得たと語る。ラオス国営テレビ(LNTV)に入社した当時、子供向け番組を制作していたというVilayvone氏。当時もドキュメンタリー番組を制作していたが、今回のように特定のテーマや場所に焦点を当てたものは無かったと言う。Vilayvone氏にとって、経済回廊のメリットと可能性をどう伝えるかは、困難であると同時に、やりがいのある仕事であった。また、このドキュメンタリー制作のためには、多くの調査が必要であった。制作スタッフは、制作開始時の入念かつ体系的な計画作成の重要性を学び、現場を調査し、彼ら自身の視点からストーリーを伝える方法を学んだと語る。さらに、計画を遂行する上で物事が思い通りに進まないときのトラブルシューティングの方法等、柔軟性も身につけた。

 

 

 

 

 

このプロジェクトでは5本のドキュメンタリーが制作された。ラオス国営テレビ(LNTV)のドキュメンタリーのほか、NHKインターナショナルが制作した「概要」と、カンボジア国営テレビ(TVK)、ミャンマー国営ラジオテレビ(MRTV)、ベトナム国営テレビ(VTV)がそれぞれ制作した3本のドキュメンタリーが含まれる。

技術面において、ラオス国営テレビの制作スタッフは、ドキュメンタリー制作を指導した日本のNHKの技術者からアドバイスを受けた。ナレーション、効果音、音楽、ボイスオーバーなどを重ねる、マルチオーディオもそのひとつである。「これまで外国人にインタビューするときはナレーションだけでしたが、このプロジェクトでは、字幕をつけなければなりませんでした。他の国では当たり前かもしれませんが、ラオスでは新しい経験でした」とVilayvone氏は語った。ナレーションの入れ方などの具体的な内容について、聴覚に障がいのある方への配慮など、インクルーシブな取材の原則を学んだのだという。

カメラマンのOudon Oundala氏は、言葉の壁がある中で、NHKの専門家から新しい撮影技術を学んだ。「NHKの専門家と一緒に仕事をするのは、普段の仕事とは違いました」とOudon氏。さらに日本を訪れ、NHKのスタジオでドキュメンタリー制作のための技術を学んだ。

東西経済回廊のひとつ、サワンナケートにある第二友好橋での夕日に合わせた3日間の撮影は、スタッフにとって忘れられない経験のひとつとなった。国際標準に匹敵する高品質の番組を作るとはどういうことか、彼らは学ぶこととなった。そして何より、クオリティの高い番組を制作するのに必要不可欠である、チームワークが強まった。

ラオス国営テレビ(LNTV)の制作スタッフにとって、ドキュメンタリー制作は決して新しいものではなく、彼らには何年かの経験がある。しかしこのプロジェクトによって、それぞれの専門分野において技術が上達したと、全員が認めた。スタッフは、より多くの国際的なメディア協力プロジェクトに参加することを望んでいる。また、日本とASEANの友好関係を含む、より強いASEANの認知と友好のために、メディア交流プロジェクトが果たす役割をよく理解している。

日本はASEANと、特にテレビ放送に関して、二国間および多国間協力の長い歴史がある。日・ASEAN統合基金(JAIF)を通じて、日本は「日ASEAN協力に関するドキュメンタリー番組の制作を通じたASEAN域内放送事業者の能力向上」を支援してきた。このプロジェクトは、ASEANの国営放送局の能力向上と、ASEANおよび日・ASEAN協力に関する認知度向上の2つの目的を掲げている。そのフェーズ1として、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム(CLMV)の国営放送局が先陣を切った。「連結性と経済回廊」をテーマとして、フェーズ1は2017年に実施された。2019年にはフェーズ2が実施され、残りのASEAN諸国がプロジェクトを指導した。フェーズ2では「Discover New Buena Vista」というテーマに沿い、地域の観光投資の拡大を目指した。両フェーズとも、NHKインターナショナルが実施を務めた。

1 「ラオス議長国支援:メディア関連政府職員等の能力構築」、同じくJAIFを通じたプロジェクト。