JAIFの人権関係支援
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背景
2007年のASEAN憲章の採択を受けて、ASEANはその人権機関として、 ASEAN政府間人権委員会(AICHR) を設立した。ASEAN政府間人権委員会(AICHR)は、2009年の第15回ASEAN首脳会議での「ASEAN政府間人権委員会(AICHR)の設立に関するチャアムフアヒン宣言」によって発足した。AICHRの設立は、人権に関する地域協力の推進と強化に対する、ASEAN地域の取り組みを示している。世界人権宣言1, 国連憲章、ウィーン宣言と行動計画、その他の国際人権文書に対するASEANの取り組みの一環として、 「ASEAN人権宣言」 が2012年11月にASEAN首脳によって採択され、ASEAN地域における人権協力に対する取り組みが一層強化されることとなった。
出典: ASEANにおけるの人権の歴史https://aichr.org/about-aichr-2
2015年に開催された「ASEAN共同体における障害者の権利の主流化に関する第1回ASEAN政府間人権委員会(AICHR)地域対話」は、人権に関する日本とASEANの協力の開始を示すものであった。「ASEAN政府間人権委員会(AICHR)の5ヶ年作業計画 (2010〜2015)」や、近年完了した2016年から2020年の同計画に基づき、AICHRの付託条項に則って、日本とASEANは連携して人権に関する優先分野の取り組みを続けている。
支援分野と 主な貢献
JAIFの人権関係に対する支援は、2015年から2019年にかけて開催された「ASEAN共同体における障害者の権利の主流化に関する5つのASEAN政府間人権委員会(AICHR)地域対話」など、AICHRが実施したプロジェクトによく反映されている。AICHR地域対話に対する日本の継続的な支援は、「ASEAN Enabling Masterplan 2025:障害者の権利の主流化」 の策定に繋がり、2018年11月の第33回ASEAN首脳会議で採択された。「The Enabling Masterplan 2025」は、ASEAN共同体ビジョン2025を補完し、ASEAN共同体の3つの柱すべてにおいて障害者の権利を主流化するための重要な手段となっている。また、同マスタープランは、ASEAN加盟国の包摂的共同体に向けた取り組みを促進している。以下は、 AICHRの5ヶ年作業計画(2016-2020)の実施に関連して、JAIFが実施したプロジェクトの主な成果である。
人権分野におけるJAIFのフラグシッププロジェクト
ラオス出身のMetta Thippawong氏は、「ASEAN共同体における障害者の人権の主流化に関するASEAN政府間人権委員会(AICHR)地域対話2019(ジェンダー的視点から見る障害者の人権) 」の参加者の1人であり、対話での経験や、ラオスにおける障害者の人権の現状、将来への希望などを語った。
障害者の権利におけるジェンダーの視点がメインテーマとなった2019年AICHR地域対話では、政策立案者、政府関係者、法執行機関、民間企業、学術界、その他のパートナーなど、さまざまなセクターから120人以上が参加した。3日間にわたり、「女性障害者と政治的権利」「ジェンダーの視点と司法制度」「障害を持つ女性と女児のための災害対策と管理」「障害を持つ女性と女児のためのインクルーシブ教育」「ビジネスにおける女性と障害者の権利の主流化」というテーマで議論が行われた。
ラオスから対話に参加したMetta Thippawongs氏は、プログラムマネージャーとして矯正器具・人工装具事業協同組合(COPE)を率いている。Metta氏も身体に障害があり、他の障害者がより良い生活を送れるよう支援することに情熱を注いでいる。
ラオスでは、都市部と農村部の両方において、ほとんどの女性や女児が慣習的に家事労働に従事しており、障害を持つ女性や女児の地位は地域社会で特に低く、教育やリハビリテーションサービスを受けることが難しい。また、地域社会に残る偏見から、家族の同伴がなければ外出することができない。「その結果、障害のある女性や少女は教育や社会活動に参加できず、家計の収入も減り、さらに生活が苦しくなるという悪循環に陥っています」と、Metta氏は説明する。
今回の対話において参加者は、JAIFが支援するさまざまなキャパシティービルディングを実施しているバンコクのアジア太平洋障害者センター(APCD)2を訪問する機会を得た。参加者は、同センターで行われている障害者団体向けのリーダーシップ研修を見学し、そこで働く障害者の専門家から障害者インクルージョン活動について沢山のことを学んだ。
集合写真を撮るArunee氏(前列右から1人目)と2019年AICHR地域対話の参加者たち。
© AICHRタイ代表
対話の後、ラオスの障害者団体がASEAN Enabling Masterplan 2025を実施するための中心機関として、障害者主流化アドバイザリーサービス(DMAS)センターという現地組織が設立された。 Metta氏は、自国での具体的な前進を目の当たりにして、とても喜んだ。DMASセンターの設立にあたり、アジア太平洋障害者センター(APCD)から得た学びは、 コミュニティのあらゆる領域や政策における障害者の権利の主流化について、トレーニングを提供したり、人々を教育することに活用された。DMASセンターの活動により、 ラオスの障害者団体は、障害者の教育、政治、経済へのアクセスを支援するマスタープランの76の主要な行動計画について、より深く理解することができた。
Metta氏のストーリーは受益者の声で閲覧可能。
日本政府は AICHR(ASEAN政府間人権委員会)の5カ年計画(2021-2025) への支援を続けている。新たな作業計画の下、日本とAICHR(ASEAN政府間人権委員会)は2回のインターフェースを開催し、ビジネスと人権を新たな協力分野とした。
1 世界人権宣言(UDHR)は、人権関係の歴史において画期的な文書である。世界のあらゆる地域から集まった法的・文化的背景の異なる代表者によって起草されたこの宣言は、1948年12月10日にパリで開催された国連総会(総会決議 217 A)で、すべての国民とすべての国の共通の成果基準とされた。出典: https://www.un.org/en/about-us/universal-declaration-of-human-rights
2 アジア太平洋障害者開発センター(APCD)は、開発と障害者のための地域センターである。APCDは、1993年から2002年の「アジア太平洋障害者の10年」の遺産として、タイ王国政府 社会開発・人間安全保障省と日本政府 独立行政法人国際協力機構(JICA)の共同協力により、タイ・バンコクに設立された。
3 障害者主流化アドバイザリーサービス(DMAS)センターは、2019年8月に米国の支援を受けて設立され、ビエンチャンやラオスの他の州において、障害者が質の高いサービスを受け、尊厳を持って自立して生活し、コミュニティに完全に参加できるような最大の能力を発揮できるよう支援することを目的としている。DMASは、公的機関や民間企業に対して、障害者のインクルージョンに関してのアドバイザリーサービスや技術的な専門知識を提供している組織である。
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