大学へのASEANコーナー創設

提案者:ASEAN事務局(ASEC)
実施機関:ASEAN事務局(ASEC)

背景

2015年にASEAN共同体が発足したことで、ASEANについての認識や関心が高まっている。しかし、ASEANに関するタイムリーな情報は、同地域内の大学で十分に提供されていない。さらに一般市民は、ASEANの3つの柱についての情報にはあまり触れていないのが現状である。2018年に実施された「ASEANの認知度に関する世論調査」では、回答した15歳以上の一般市民の98%以上がASEANを認知していることが明らかになった。しかし、ASEAN共同体やその3つの柱について知識があるとする人は4分の1以下であり、ASEANに関する深い知識がないことがうかがえる。また、2017年に東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)が実施した調査では、50歳以上の回答者に比べて、若い回答者(15~30歳)の方がASEANに関する知識が乏しい傾向にあることが分かった。

このような背景を踏まえて、ASEAN市民がASEANとASEAN共同体について情報を得られるようにするためには、地域全体で行動していく必要がある。ASEAN文化情報委員会(COCI)が、ASEAN40周年を記念してASEAN国立博物館にASEANコーナーを設置した取り組みに続いて、本プロジェクトでは、ASEAN加盟国の高等教育機関の図書館に情報センターを設置することを目的としている。

プロジェクトは何を目指している?

本パイロットプロジェクトでは、ASEAN大学ネットワーク(AUN)の加盟10大学における、図書館間相互オンラインネットワーク(AUNILO)を活用した、ASEANコーナーの設置を目指している。ASEANコーナーは、学生や大学関係者のためのナレッジハブとして機能し、ASEANの認知とアイデンティティをさらに促進する。各コーナーには専用のコンピューター端末や携帯端末が設置され、ASEAN文化遺産デジタルアーカイブ(ACHDA)を含む幅広いコンテンツの閲覧が可能である。ASEAN文化遺産デジタルアーカイブは、ASEANとJAIFの主要なイニシアティブであり、ASEAN地域の博物館や文化施設の文化財を紹介し、より多くの人々にその価値と重要性を理解してもらうことが目的だ。また、本プロジェクトは以下のような成果も期待される:

  • 学生、大学関係者、一般の人々がASEANの取り組みや政策に関する情報にアクセスしやすくする
  • ASEANとASEAN共同体に関する理解を深める

「ASEANの繋がりは、私たちの共同体がASEANに対して深い理解と認識を持つことでのみ実現し、維持される。ASEANの繋がりは、人々に利益をもたらすだけでなく、地域や世界にも利益をもたらすものだ。ASEANアイデンティティについて、ひとつの確かな物語を持つことで、私たちはより現実的な共同体となれるだろう。」

ルトノ ・マルスディ インドネシア外務大臣への、ASEANのアイデンティティに関するインタビュー

The ASEAN マガジンー2020年5月 1号 12ページ

全体として、大学へのASEANコーナー創設(フェーズ1プロジェクトは、ASEAN社会・文化共同体(ASCC)ブループリント2025の達成に貢献しており、特にASEANの認識とアイデンティティを高めるという点において、「戦略的措置 A.2.vi: ASEANのアイデンティティの一部として、政府関係者、学生、子供、若者、すべてのステークホルダーの間で、ASEANの認識を促進する」 さらに、「E.1.x ASEAN独自の記念日や旗のような、包括的で多様なステークホルダーによるブランディング活動を通じて、ASEANの認知度を向上させる」 に寄与している。また、一般の人々がASEANについての知識を入手しやすくするという点で、ASEANコミュニケーション・マスタープランII(2018-2025)にも貢献している。

本プロジェクトは20213月に開始され、プロジェクトの作業計画に従って、各大学でのASEANコーナーの設置は20216月から実施される予定。

2021年5月31日