ASEAN加盟国における温室効果ガスの施設レベルの算定・報告(M&R)枠組みの開発と実施(フェーズ2)
提案者 | : | シンガポール国家環境庁(NEA) |
---|---|---|
実施機関 | : | 一般社団法人 海外環境協力センター(OECC) |
背景
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第2条では、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガス(GHG)の濃度を安定化させることを究極的な目的として定めている。[1]気候変動に関する政府間パネルは、迅速かつ大規模な排出削減が行われない限り、今世紀中に地球の気温が産業革命以前より摂氏2度上昇すると警告しており、気温上昇を摂氏1.5度に抑えるためには、この10年間で二酸化炭素の排出量を抑制する必要があるとしている。[2]
気候変動対策において、温室効果ガス排出量と排出削減量の効果的な算定・報告・検証(MRV)は極めて重要である。2007年に開催された気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)では、気候変動の緩和に関する国内および国際的な施策を強化するという観点から、排出量と排出削減量の算定・報告・検証を途上国にも適用するという原則に合意した。[3]その結果、ASEAN加盟国は、各国で現在異なる段階にある「国が決定する貢献(NDC)」の進捗状況を正確に把握するための、確実な算定・報告・検証の手法を開発・実施する必要がある。
この緊急性を認識した日本政府は、ASEAN加盟国における温室効果ガスの施設レベルの算定・報告 (M&R) 枠組みの開発と実施(フェーズ2)を支援し、ASEAN地域に適用可能な施設レベルのM&Rガイドラインを作成し、パイロットプロジェクトを通じてそれらのガイドラインを検証する。
プロジェクトは何を目指している?
本プロジェクトは、ASEAN地域における施設レベルの温室効果ガスの算定・報告についてのガイドライン設計のためのロードマップの作成に至った「ASEAN各国における温室効果ガスの施設・企業レベルの算定・報告・検証システムの開発及び実施」プロジェクトのフェーズ2である。両フェーズ共に「コ・イノベーションのための透明性パートナーシップ(PaSTI)」のイニシアティブの一環である。これまでの成果を踏まえ、フェーズ2では、以下の目標を通じて、政府と民間セクターの協力を促進し、コ・イノベーションを実現することを目指している:
- ASEAN加盟国が、国および国以外のアクターが参加する透明性システムを構築する際に参照・考慮すべきツールとして、ASEAN地域における温室効果ガスの施設レベルの算定・報告(M&R)ガイドラインを開発する
- 国および国以外のアクターの協力のもと、算定・報告(M&R)ガイドラインを活用した施設レベルの算定・報告を実践するための、パイロットプロジェクトを設計
- ASEAN諸国の透明性に向けた取り組みに関する、情報プラットフォームの開発
温室効果ガスの算定・報告・検証(MRV)の制度は、国や企業の低炭素技術やソリューションについての協力を促し、信頼性の高い炭素市場の発展にも寄与する。
Grace Fuシンガポール持続可能性・環境大臣
2021年11月12日 グラスゴーにおけるCOP26ジャパンパビリオン サイドイベント
本プロジェクトは、「ASEAN社会・文化共同体ブループリント2025」、特にAction Line C.3:持続可能な気候、およびD.3 気候変動の影響に適応するための制度的・人的能力を高めた、気候変動に適応可能なASEAN に貢献するものである。さらに、ASEAN加盟国における温室効果ガス排出量を削減するための能力構築と技術移転を通じた、持続可能な開発目標13「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」に対する日本とASEANの取り組みを促進している。それにより気候変動の影響を緩和することで、「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」に示されている、すべての人々のための発展と繁栄に貢献する。
本プロジェクトは2021年12月に開始され、2022年11月まで継続予定。
30 May 2022