ASEANの米生産は、気候変動、土地の劣化、人口増加、都市化などの悪影響から生じる課題に直面している。気温が1度上昇するごとに、米の収量は10%減少し(Peng et al. 2004)、経済成長は1.3%減少すると予測されている(Dell, Jones, and Olken 2012)。グローバル気候リスクインデックス2020によると、気候変動の影響を最も受け、豪雨・洪水・干ばつによる生産損失の被害が見込まれる全世界10カ国の中に、4つのASEAN加盟国(ミャンマー、フィリピン、ベトナム、タイ)が含まれている。また、米の主要輸出国の一つであるベトナムの一部地域では、最大23%の収量減少が予想されている(Teng et.al. 2016)。また、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムの4カ国(CLMV)では、5歳未満の栄養不良(発育阻害)がそれぞれ32.4%、44.2%、24.6%、29.4%となっている(Global Nutrition Report 2020)。
このような課題がある中で、ASEAN加盟国は、2019年の第41回ASEAN農林大臣会合(AMAF)において、ASEANライスネットという新たな地域ネットワークを承認している。このネットワークは、先進的な稲育種系統を共有・評価し、すべてのASEAN加盟国の農家が求める、気候に強い、高性能な従来型稲品種を生み出す支援をすることを目的としている。