全ての「人」が輝ける世界へーASEANにおける障害者(PWD)の総合的な生活の質とウェルビーイング向上のためのプロジェクト(フェーズ1)

29 June 2019

アジア太平洋障害者開発センター(APCD)

農村部の市場は、地域の商取引の中心であり、地元経済の要となっている。しかしこうした市場は、障害者やその他困難のある人々にとって、アクセスが難しいことが多い。以下は、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムにおける、4人の体験談である。農村部の市場を障害を持つ人々にもアクセスしやすくすることで、彼らが製品やサービスを利用する機会が増えるだけでなく、貧困と闘う手段として、彼ら自身が製品やサービスを提供する機会になることを実証している。

以下4つの体験談の詳細は、をご覧ください。

コミュニティとの一体感
カンボジア カンダル州 Kien Svay地区 Phlou Thmey市場

Sok Vath氏と家族が営む2軒目の市場屋台にて

© アジア太平洋障害者開発センター(APCD)

「市場の改修は、障害のある人、ない人、子供、妊娠中の女性、高齢者など、市場を利用するすべての人々にとって良いことです。」ー市場の出店者 Mao Phal氏

月のクレーターを思わせる未舗装の道は、ぬかるんで滑りやすいことも多く、車椅子使用者が毎日市場に行くことは難しかった。しかし最近では、APCD/JAIFプロジェクトによる農村部の市場改修と、Phlou Thmey市場で家族が店を営むスペースが無料で提供されたおかげで、Sok Vath氏は明るい未来を期待できるようになった。彼の妻である57歳のMao Phal氏は、プロジェクトが夫に与えたポジティブな影響を喜ぶ。「夫は週に4、5日市場に来るようになり、車椅子を店内に持ち込めるようになりました。話すことはできませんが、今ではよく笑うようになり、市場の仲間たちからたくさんの励ましをもらっています。健康状態もずっとよくなりました」とMao Phal氏は言う。

Nong Sa市場で小さな屋台を営むSrisupun Audonsawan氏

© アジア太平洋障害者開発センター(APCD)

制限を乗りこえる

ラオス ヴィエンチャン Naxaithong地区 Nong Sa市場

「私は自立して生きたいし、誰の重荷にもなりたくない…」ー市場の屋台出店者 Srisupun Audonsawan氏

Srisupun Audonsawan氏は、年齢を感じさせないシャイで子供のような笑顔の持ち主だ。実年齢の26歳よりも若い、10代の少女ように見える。控えめで物腰の柔らかい彼女は、Nong Sa市場の小さな屋台で乾燥野菜と麺を売っている。公設市場の混沌の中、彼女の屋台は小さなオアシスのようで、玉ねぎやニンニク、マカロニパック、麺類、乾燥キノコ、春巻きの皮などが丁寧に並べられている。APCD/JAIFプロジェクトの無料市場スペースの受益者として、Srisupun氏は自分自身のために大きな一歩を踏み出し、障害のある人々の模範となっている。

Disability Awareness in Action
障害者の意識向上を形に

ミャンマー エーヤワディー地方域 Pyapon郷 Myauk Pine Market市場

Myauk Pine市場のいつもの朝

© アジア太平洋障害者開発センター(APCD)

「市場が以前より利用しやすくなったことをとても嬉しく思います。以前は、特に雨季には通路を歩くのが大変でした。今は問題なく歩けます」ー障害を持つ男の子の母親 San San Myint氏

「市場で食べ物を買って、ここで友達と遊んでいます」と8歳のHtet Mon Hutくんは言う。「車椅子は見たことがないですが、松葉杖をついて市場に来る人を何人か見たことがあります。」35歳でHtetくんの母親のSan San Myint氏は、当時行われていた意識向上活動の光景と音に意識を向け、委員会のメンバーが近づいて少し話をすると、満面の笑みを浮かべ、「息子と一緒に毎日ここへ来るので、市場の改修のことは聞いています」と自転車に乗った7歳のSei Thuくんについて話す。Seiくんは言葉は話すことはできないが、耳は聞こえる。

無料市場スペースの受益者であるPhung Thi Hoa氏とChu Thi Lan氏

© アジア太平洋障害者開発センター(APCD)

A Tale of Two Mothers
2人の母親の物語

Nhong Market, Ba Vi District, Hanoi, Viet Nam
ベトナム ハノイ Ba Vi地区 Nhong市場

「ここでの商売はかつてないほど快適になり、ビジネスも順調です」ー母親 Phung Thi Hoa氏

「新しいトイレのおかげでかなりの時間を節約できています。私がちょっと留守にしている間、店番をしてくれる親切な友人もいます」ー母親 Chu Thi Lan氏

Phung Thi Hoa氏が、まだNhong市場の屋根のない露店で商売をしていた頃は、炎天下で日に焼けたり、雨に濡れたり、寒さに震えたりしていた。一方、Chu Thi Lan氏は、自身の小さな仕立て・修理屋にいる際、500メートル離れたトイレに1日1回のみ行くことに慣れてしまっていた。2人共、母親として、家族を養うために健康でなければならない。

カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムにおいて、地元の政府関係者、国、障害者、市場の関係者、および地元コミュニティの緊密な協力・連携のもと、バリアフリースロープ・通路・トイレなどの設置や、無料市場スペースの提供など、バリアフリー環境形成に向けた取り組みが行われた。これらの活動は、日本政府が日・ASEAN統合基金(JAIF)を通じて支援した「ASEAN域内の地域コミュニティにおけるバリアフリー環境形成プロジェクト」の一環である。同プロジェクトは、同じくJAIFを通じて支援された「ASEANにおける障害者(PWD)の総合的な生活の質とウェルビーイング向上プロジェクト(フェーズ1)」を引き継いで実施された。

これら2つのプロジェクトは、2012年から2015年にかけてアジア太平洋障害者開発センター(APCD) によって実施された。