ASEAN中小企業向け研修を通じて輸出能力を強化

30 March 2020

JAIFマネージメントチーム

ASEAN諸国の企業の90%以上は中小零細企業(MSME)であり、同地域内の雇用の50%から90%を占めている。中小零細企業はASEAN経済の重要な「成長のエンジン」とも言え、ASEAN加盟国のGDPの最大50%に貢献している。1ASEAN経済への貢献度は高いものの、現状では、中小零細企業は海外大手メーカーの下請けとしてサプライチェーンの下層に位置づけられることが多い。そのため、中小零細企業が海外メーカーから受け取る収入は、しばしば製品価格の20〜30%程度にとどまっている。2中小零細企業の、情報と市場へのアクセス、技術力の不足が、その発展を妨げているのだ。

「中小企業のための輸出能力構築及び向上に係る訓練」プロジェクトは、2017年12月にホーチミンでのワークショップ、現地中小零細企業の視察、ASEAN中小企業向け輸出に関する参考ガイドブックの出版で構成され、ASEAN加盟国全10カ国から合計85名が参加した。本プロジェクトは、ASEANの中小零細企業および関連団体の輸出能力を高め、関係者間のネットワークを構築し、中小零細企業の世界経済へのアクセスに貢献した。

「中小零細企業は通常、国内市場に重点を置いており、海外での事業展開が課題となっています。中小企業の輸出能力を強化することで、ベトナムと、さらにはASEAN地域の雇用創出と持続可能な発展を実現することができます。」とベトナム商工省、多角的貿易政策局、APEC・国際経済協力課長のVu Lien Huong氏は述べた。3日間のワークショップを振り返り、最も実践的だったのは、輸出品のカテゴリーごとにグループに分かれ、HSHarmonized System)コードの定義方法を勉強した「Tariff Finder and Rules of Origin(ROO)」の演習だったという。またHuong氏は、中小零細企業のイノベーションとデジタル化が、ビジネスをスタートさせる鍵になることも、この研修で学んだ。

Huong sharing her experiences and takeaways from the training

研修での体験と学びを語るHuong氏

©️JAIFマネージメントチーム

The Reference Guidebook for ASEAN SME Exporters

ASEAN中小企業 輸出に関する参考ガイドブック

©️ASEAN事務局

プロジェクトの成果の一つとして出版された「ASEAN中小企業 輸出に関する参考ガイドブック」は、中小零細企業が商品やサービスを輸出する際の手順をステップごとに説明した、便利なツールだ。Huong氏と同僚は、商工省がベトナム国内の中小零細企業向けに同様のワークショップを実施する際に、このガイドブックが研修教材として役に立つと考えている。現在、同省の主導でベトナム語に翻訳中で、2020年には同省のウェブサイトで公開される予定。

商工省・国際経済協力課・副課長のHoang Thi Ngoc Mai氏は、政府関係者から民間セクターや中小零細企業関連団体まで、多様な参加者が集まったことに最も感銘を受けたという。彼女にとって、中小零細企業の輸出において既存の自由貿易協定(FTA)をいかにうまく活用するかについてのセッションは、有益であった。特に、日本の専門家から提供された輸出入の規制に関する情報は、品質管理の水準の高さや、ASEANの中小零細企業が日本市場に参入する方法について学ぶことができ、目から鱗が落ちたという。「研修に参加した中小零細企業は、有益なセッションに非常に満足し、将来的には、さらに専門的で具体的な問題を扱う、同様のワークショップの開催を求めていた」と彼女は語る。

Hoang Thi Ngoc Mai, Deputy Head of APEC and International Economic Cooperation Division of MOIT

Hoang Thi Ngoc Mai氏(商工省・国際経済協力副課長)

©️JAIFマネージメントチーム

Dinh Thanh Son, General Policy and Project Division of MOIT

Dinh Thanh Son 氏 (商工省 総合政策・プロジェクト課)

©️JAIFマネージメントチーム

商工省 総合政策・プロジェクト課のDinh Thanh Son氏は、「ワークショップに参加したことで、日本のようなパートナーとの物品貿易の交渉の場に参加する機会を得ることができました」と振り返る。最も注目されたのは、EU、米国、日本などに輸出する野菜や果物の加工品を製造している現地中小零細企業を、半日かけて訪問したこと。現地の中小零細企業が実際にどのように活動しているかを見学することで、視野が広がり、日々の仕事への関わり方が変わってきたという。また、ASEAN加盟国のネットワークを構築する機会を得たことにも感謝しており、ASEAN閣僚会議で担当者と会う際には、今でも情報交換を続けている。

参加者らは、このワークショップが中小零細企業の成長にプラスの影響を与えたと評価している。中小零細企業が経済成長に貢献することは確実だと、参加者は自信に満ちた表情で語った。この研修のハイライトは、中小零細企業が日・ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定や、その他の既存の自由貿易協定(FTA)をどのように活用すればよいか、日本とASEANの講師がケーススタディを行ったことである。これにより、中小零細企業は国際市場、特に日本市場にビジネスを拡大することができるようになった。ワークショップの後、自由貿易協定(FTA)の利点を生かした関税削減に関する情報を得るために、中小零細企業がより積極的に参加する様子が見られた。

Dinh Thanh Son, General Policy and Project Division of MOITASEAN中小企業輸出能力向上ワークショップの様子

🄫ベトナム商工省

日本は、「ASEAN中小企業発展のための戦略的行動計画 2016-2025(SAP SMED 2025)」に基づき、中小企業の競争力を高めるため、特に地域の生産ネットワークにおける中小企業零細の開発を支援している。 JAIFの中小企業支援に関する詳細は、セクター概要を参照。本プロジェクトは、日本政府が日・ASEAN統合基金(JAIF)を通じて支援したものである。

1 概要: ASEANの中小企業発展 以下参照 https://asean.org/our-communities/economic-community/resilient-and-inclusive-asean/development-of-micro-small-and-medium-enterprises-in-asean-msme/

2 記事の情報の一部は、ベトナム皮革・靴・鞄協会(LEAFASO)のディレクターであるLe Xuan Duong氏へのインタビューから引用。LEAFASOのホーチミン支部は、この研修の参加団体の一つ。