有機農法を学ぶASEAN地域の農家たち

30 March 2019

フィリピン稲研究所

経費の削減、収穫量の増加、収入の増加、そして地域社会にとってより安全で健康的な食糧の生産という、持続的な有機農業の利点を実感するASEANの農家が増えている。今回は、フィリピンの有機農家であるDewey氏、Moses氏、Renato氏の3人に、有機農法を導入した理由と経緯を聞いていく1

I有機農業の最終的な受益者である農家らをプロジェクトに関与させることは、理論と実践をつなぐ試みだけでなく、彼ら自身を巻き込み、取り組みに従事してもらうための試みにもなっている。

© フィリピン稲研究所

Dewey氏、Moses氏、Renato氏が受けた有機農業技術に関する研修は、「有機農業システムにおける米生産に係る人材育成」プロジェクトの一環として行われたものである。このプロジェクトを通じて、ASEANの農家は、農薬を多く使用せずとも高品質で持続可能な収量を生産する方法や、自然素材や廃棄物を利用して農場の有用な肥料に変換する方法、および各国の状況に適した統合的有機農業技術の開発に関する知識と技術を向上させた。さらにこのプロジェクトでは、マルチステークホルダーによる共同研究実験が行われた。この実験では、無機農法で育成された40種類の米品種を有機農業技術で試験し、それぞれのASEAN加盟国の小規模農家が採用する高収量米品種のベスト10とトップ5を特定することに成功している。

「有機農業システムにおける米生産に係る人材育成」プロジェクトは、フィリピン稲研究所がASEAN加盟国の主要な稲作研究者や研究機関と連携し、日・ASEAN統合基金(JAIF)を通じて日本政府から支援を受け、2015年から2017年にかけて実施された。

1 有機農業は、生態学的に健全で、社会的に受け入れられ、経済的に実行可能で、技術的に実現可能な食料と繊維の生産を促進するすべての農業システムを含んでいる。有機農業は、化学肥料、農薬、医薬品の使用を控えることで、外部からの農薬投入を劇的に削減する。また、土壌肥沃度管理、化学肥料や農薬を使わない条件での品種改良と選抜、バイオテクノロジーの利用、その他本法の原則と方針に合致し、国際有機農業運動連盟(IFOAM)が定義する、土壌を破壊せず、農民や消費者や環境に害を与えずに生産性を高める農法の実践、などの分野を対象とするが、これらに限定しない: ただし、ここでいうバイオテクノロジーには、遺伝子組み換え作物(GMO)は含まれないものとする。(フィリピン 2010年有機農業法3b)