ASEAN経済の持続可能な発展を促進する、起業家ネットワークのためのASEANメンターシップ(AMEN)
2024年2月19日

ASEAN経済の持続可能な発展を促進する、起業家ネットワークのためのASEANメンターシップ(AMEN)

ASEAN ビジネス諮問委員会(ASEAN-BAC) JAIFマネジメントチーム

起業家精神は経済成長の中心にあり、中小零細企業(MSME)は、イノベーション、そしてASEAN域内の経済統合を促進する上で重要な役割を果たしている。2023年9月にインドネシアのジャカルタで開催された第43回ASEAN首脳会議では、ASEANの中小零細企業が持つ潜在能力が強調され、加盟国に対し、 包摂的なビジネスモデルの中で中小零細企業の強化を支援し、公平な成長のために一層支援を強めていく. ことが求められた。特に、ASEAN中小零細企業のデジタル化・グリーン経済・サプライチェーンといった分野において、ビジネスの包摂性を促進していく必要がある。

I多様な背景を持つASEANにおける起業家たちは、デジタルリテラシーや継続的なメンターシップの不足など、様々な課題に直面している。このような課題に対処するため、起業家ネットワークのためのASEANメンターシップ(AMEN)が設立され、包括的なメンターシップを提供し、起業家が自信とレジリエンスをもってビジネスの複雑性を乗り越えていけるよう支援している。AMENは、起業のどの段階においてもモチベーションが高まるよう、各個人に合わせて設計されたメンタリングプログラムを提供することで、起業家が抱える課題を解決に導いてきた。

今回はAMENのメンティー数名が、モジュール、メンターシップ、ネットワーキングを通じて、このイニシアティブが、いかに自身のビジネスの成長に貢献したかについて語った。

   

Testimonial from

Mohammad Syafiq Syukri

Paning Free Company創業者兼CEO © ASEAN ビジネス諮問委員会(ASEAN-BAC)、フィリピン

「AMENプロジェクトは、私自身にもビジネスにも、大きな影響を与えました。同プログラムの最大の学びは、経験豊富な起業家や業界の専門家から受けた貴重なメンターシップでした」

Testimonial image 1Founder and CEO Paning Free
Testimonial image 2Mohamad Syafiq Syukri

ウェルネス事業が好調

Mohammad Syafiq Syukri氏は、ブルネイのPaning Free Companyの創業者兼CEOで、カッピングやマッサージサービスの提供を通じて顧客の健康ニーズに応えるビジネスを展開している。大学卒業後、就職が上手くいかなかったと語るMohammad氏。しかしこの経験が、同氏を起業の道へと導いた。2020年3月、Mohammad氏はオンラインとソーシャルメディアで、自分のビジネスを開始した。

「AMENプロジェクトは、私自身にもビジネスにも、大きな影響を与えました。同プログラムの最大の学びは、経験豊富な起業家や業界の専門家から受けた貴重なメンターシップでした。メンターの方々の指導、洞察、実践的なアドバイスからは新たな視点を得られ、ビジネス戦略を微調整し、ビジネスの複雑性に効果的に対処していくのに役立ちました」とMohammad氏は語った。

Mohammad氏にとって、1対1のメンタリングセッションはプログラムの中で最も有益なものだった。個人同士の対話を通じて、ビジネスの課題や機会を深く掘り下げることができ、メンターから自分のビジネスについての個別のアドバイスや解決策を聞くことができたためである。このような実践的なアプローチは、Mohammad氏のビジネスの成長と発展に大きく貢献した。

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Ky Chhorvy

KK 11 Mini Martオーナー © ASEAN ビジネス諮問委員会(ASEAN-BAC)、フィリピン

「AMENプログラムに参加して、ビジネスに関する複数のスキルを身につけたことで、私のビジネスの成長を加速させ、私のような女性に力を与える、重要なツールとなっています」

Testimonial image 1KK 11 Mini Martオーナー © ASEAN ビジネス諮問委員会(ASEAN-BAC)、フィリピン
Testimonial image 2© ASEAN ビジネス諮問委員会(ASEAN-BAC)、フィリピン

努力と献身で夢を叶える

Ky Chhorvy氏は、カンボジアのシェムリアップにあるKK 11 Mini Martのオーナーである。Ky氏の起業の旅は、組織再編を理由に12年間勤めた会社から解雇されたことから始まった。2018年に起業したには、パンデミックがビジネスを襲った。

そんな状況でも逆境に負けず、自分のビジネスを持つという夢を止めなかったKy氏は、自宅を売却し、2021年11月に始めたビジネスに全財産を投資した。Ky氏はAMENプログラムに参加し、起業家としてのマインドセットを学び、起業家に必要な力強さ、モチベーション、クリティカルシンキングを身につけた。

「他のメンティーと比べて私のビジネスは、まだ初めて間もないです。しかし、AMENプログラムに参加して、ビジネスに関する複数のスキルを身につけたことで、私のビジネスの成長を加速させ、私のような女性に力を与える、重要なツールとなっています。メンタリングとコーチングの両プログラムは、私のビジネスの成長において重要な役割を果たしています。」

「夢をあきらめないで。夢を実現するためには、目標が達成されるまで、ビジネスの発展段階を通じて、多くの努力、コミットメント、エネルギーが必要です」とKy氏は締めくくった。

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Wansiri Nimpatakong

Prompt Pa Company Ltd.創業者兼マネージングディレクター ©︎ ASEAN ビジネス諮問委員会(ASEAN-BAC)、フィリピン

「AMENは私にとって、パンデミック後の特別なコースでした。AMENのコースでは、デジタル化への適応と、サービスの最適化についてのスキルを学びました」

Testimonial image 1Prompt Pa Company Ltd.創業者兼マネージングディレクター ©︎ ASEAN ビジネス諮問委員会(ASEAN-BAC)、フィリピン
Testimonial image 2©︎ ASEAN ビジネス諮問委員会(ASEAN-BAC)、フィリピン

デジタル化で需要と供給を満たす

AMENは、デジタル化に向かう現在の経済情勢における、ビジネスの適応についても支援している。
Wansiri Nimpitakpong氏はタイ出身のAMENメンティーであり、タイのPrompt Pa Company Ltd.の創設者兼CEOである。同社は、高齢者とその家族がPrompt Pa社の医療専門家から支援を受け、スムーズに通院し、必要な医療を受けられるようにすることを目指している。Prompt Pa社の支援には、高齢者の健康上の懸念を医師に伝え、また医師の助言を家族に伝えることも含まれる。タイでは、病院に連れ添ってくれる人がいないために、高齢者が継続的な通院ができないという課題が、近年顕著になっている。

「AMENは私にとって、パンデミック後の特別なコースでした。AMENのコースでは、デジタル化への適応と、サービスの最適化についてのスキルを学びました。そのおかげで、(費用を)できる限り安くすることが可能になり、高齢者たちの通院の負担が減りました。」
Wansiri氏は、高齢者を助けるため、他のサービスにおいても事業の拡大を望んでいる。また、自分たちのビジネスを地域社会に役 役立つものにするために、特別で最新の、そして高度な知識を、タイ語でオンライン受講できるようにしてくれたAMENに感謝している。

他のAMENメンティーも、必要なスキルや知識を身につけ、継続的な学習行った結果、ビジネスにおけるマインドセットや視点が大きく変わったことなど、AMENから得た恩恵を語っている。起業家たちのストーリーを動画で観る: AMENプロジェクト・フェーズ2の参加者の声。

AMENプログラムは、起業家たちが直面する課題に継続的に対処していくとともに、強固なネットワークを活用し、ASEAN地域全体の中小零細企業の成功と持続可能性を促進するために、各個人それぞれに合ったメンターシップを提供している。2023年8月、AMENはプログラムの第2フェーズを終了し、ASEAN加盟国で111人のコーチ、20人のコンサルタント、7人の翻訳者、105人のメンター、194人のメンティー[1]が参加するネットワークとなった。この成長はASEANにおける起業家精神の発展に大きく貢献した。大きな成功の一方で、ASEAN内での格差を是正し、中小零細企業の成功と持続可能性を確保するためには、継続的なメンターシップと訓練が必要不可欠である。


日本政府は、ASEAN中小企業発展のための戦略的行動計画 2016-2025(SAP SMED 2025). に基づき、ASEAN加盟国向けに特別に作られたプログラムを通じて、特に起業家精神と人的資源の開発の分野で、中小企業の発展を支援している。JAIFの中小企業支援に関する詳細は、 セクター概要を参照。起業家ネットワークのためのASEANメンターシップ(AMEN)プログラムは、日本政府が日・ASEAN統合基金(JAIF)を通じて支援している。

 


セクター

MSMEs

資金援助の枠組み

ASEAN地域金融危機に関する緊急経済援助(EEA)

関連受益者の声

ASEAN地域における害虫・病害の分類能力構築

ASEAN地域における害虫・病害の分類能力構築

国連食糧農業機関(FAO)の報告1は、新興植物病害の半数は、国境を越えた渡航や貿易によって広がっていると指摘する。 ASEAN地域の農産物貿易量が増加する中で、一連の検疫システムは病害虫の潜在的経路に対応していく必要がある。  ASEAN加盟国は、農産物に関連する検疫リスクを特定・管理し、病害虫を正確に診断するために、分類学的知識に関する能力を開発・強化する必要性を長年認識していた。 その結果、農作物に関するASEANセクター別ワーキンググループの支持を得て、ASEAN地域診断ネットワーク(ARDN)が設立された。 これは、「東南アジア地域で検出された農業上重要な生物(特に植物の害虫、病気、有害な雑草)の識別情報を提供するシステムとして想定されている」。 様々な機関の中でもARDNは、ASEANの専門家に分類学的能力向上プログラムを実施することで、国や地域の診断能力を高めるための枠組みを提供している。  JAIFは過去数年間、「ASEAN域内での農業貿易への市場アクセスのための分類能力構築」プロジェクトを通じて、ARDNの支援に尽力してきた。このイニシアティブの下で、専門家や診断機関のデータベースが構築された。 今回、インドネシアとシンガポールからの参加者2名が、70名近くの植物衛生専門家が参加したトレーニングでの経験について振り返る。  Hendrawan Samodra氏(インドネシア農業省農業検疫庁 植物検疫バイオセーフティセンター 上級植物検疫官)  沖縄の那覇植物防疫所でのミバエ撲滅プロジェクトを視察©ASEAN植物衛生協力ネットワーク (APHCN)  
2022年8月28日
起業家ネットワークのためのASEANメンターシップ(AMEN)を通じたメンターの育成

起業家ネットワークのためのASEANメンターシップ(AMEN)を通じたメンターの育成

ASEAN地域内の経済統合において、中小零細企業(MSME)は大きな役割を担っている。中小零細企業(MSME)の規模や能力はさまざまであるが、多くの零細・小企業(MSE)は資金や資源の不足により、その存続に苦しんでいる。このような、ASEAN地域全体における中小企業共通の苦境に対処する効果的な手段は、中小企業の事業を拡大し、収益性と持続可能性を向上させるための、制度的な能力開発プログラムである「中小企業メンタリング」の実施である。 フィリピン起業家センター(PCE-Go Negosyo)のシニアアドバイザーであるMerly M. Cruz氏は、「政府による多くの中小企業 研修プログラムは存在したが、あらゆることを包括的かつ継続的に指導するメンタープログラムは存在しなかった」と述べる。Merly氏自身は、フィリピン貿易産業省(DTI)の地域オペレーショングループ(MSME開発部門)の元次官として、政府側で勤務 した経験がある。 2016年、フィリピン起業家センター(PCE)はフィリピン貿易産業省(DTI)と協力し、フィリピンで「Kapatid Mentor Micro-Enterprise (KMME)」プログラムという、官民連携(PPP)を取り入れた、MSME能力開発を目指すメンタープログラムに着手した。PPPを取り入れることで、フィリピン起業家センター(PCE)はフィリピン貿易産業省(DTI)の全国ネットワークを活用しながら、民間セクターからメンターを採用した。また、政府のバックアップにより、メンターシップ・イニシアティブの持続可能性を確保することが可能となった。
2020年12月30日
ASEANの国営放送局、ASEAN関連コンテンツ開発で協力

ASEANの国営放送局、ASEAN関連コンテンツ開発で協力

ASEANは、そのビジョンである 「ASEAN: A Community of Opportunities for All(全ての人に機会が与えられるコミュニティ)」を実現するために、長年にわたって大きな発展を遂げてきた。しかし、ASEAN共同体形成の意味をより深く理解することは、依然として困難な課題である。ASEANの人々の日々の暮らしを垣間見ることができる興味深いコンテンツを作り出すことは、ASEAN共同体がもたらす利益と機会を広く伝えるための重要な手段となっている。 メディアの役割は、アイデンティティの形成やコミュニティの構築において、ますます重要視されてきている。ASEANはメディア、特に国営放送局とのパートナーシップによって、ASEANとコミュニティとの橋渡しをしている。しかしASEAN諸国の国営放送局は、それぞれの限界に直面し、課題を抱えている。彼らにとっては、ASEANに関連したコンテンツを制作することだけでなく、メディア従事者の能力を向上させることも課題となっている。 ラオス国営テレビ(LNTV)の制作クルーらは、「日ASEAN協力に関するドキュメンタリー番組の制作を通じた ASEAN域内放送事業者の能力向上プロジェクト(ASEAN50周年記念)」の一環として、「ASEAN Now and the Future – Connectivity and Economic Corridors」に関する一連のドキュメンタリー番組制作に関与した経験を振り返った。制作チームは、プロジェクトの成果は、出来上がったドキュメンタリー番組そのものだけではなく、その制作を通して得た経験だと語る。一連の経験が彼らにとってどのような意味を持ち、何を得たのかを聞いた。
2020年9月29日