JAIFマネジメントチーム
ASEAN地域において熱帯性ウナギは地域住民の生活や国際貿易を支える重要な役割を担っている。しかし、基礎となる科学データが不足しているため、将来的に資源が枯渇するリスクに直面している。特に、熱帯性ウナギの資源量、分布、資源構造が十分に解明されておらず、その結果、ASEAN加盟国(AMS)は安全な許容漁獲量を設定できずにいる。
日ASEAN統合基金(JAIF)の支援を受け、SEAFDEC(東南アジア漁業開発センター)事務局が主導する6年間のプロジェクト「東南アジア地域の熱帯性ウナギの資源評価手法の開発と資源管理施策の強化」(2020~2026年)は、これらの課題に対応するための重要な地域的取組である。本プロジェクトは、第1期(2017~2019年)の成果を基盤とし、第2期では、信頼性の高い資源評価手法の開発と各国間におけるデータ収集方法の調和に注力し、長期的な協力体制を築き、持続可能なウナギ漁業の実現を目指している。
具体的には、本プロジェクトは、ASEAN加盟国が漁獲データや生物学的情報を体系的に収集することを支援し、統計学を用いた資源量の推定手法を開発している。他の地域のウナギに対する国際的な規制が厳しくなる中、熱帯性ウナギへの漁獲圧が高まることが懸念されており、この取り組みは極めて急がれる課題である。

チマンドリ川において、小型船からウナギ漁用の罠を点検する漁業者。
@SEAFDEC事務局
ASEAN各地のフォーカルポイントから現場の声が集められ、実施機関が本プロジェクトから得られた主な成果を共有した。

Testimonial from
Dr. Evelyn C. Ame
フィリピン漁業水産資源局(Bureau of Fisheries and Aquatic Resources)キャリア・サイエンティスト兼研修監督官
本プロジェクトの成果は、ウナギ資源管理に関する政策立案の基礎となり得るものです。資源を乱用しないよう人々に伝え、適切に管理し、シラスウナギの違法取引を抑制することにつながります。
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2025年10月、タイ・バンコクで開催されたプロジェクト終了会合にて、右側に写るアメ博士とフィリピンからの同僚。
©SEAFDEC事務局
エブリン・C・アメ博士は、ウナギ資源管理における自国最大の課題は、シラスウナギ(透明な稚魚)の密輸や違法取引であり、これが資源の減少につながっていると考えられていることを強調した。また、本プロジェクトを通じて最も有益であった点として、東京海洋大学の専門家が開発した数理モデルによる資源評価ツールを挙げた。この手法により、これまで把握が困難であったシラスウナギ漁業の資源状況を評価することが可能となる。
同博士は、これらの成果をもとに、国内のウナギ資源を効果的に管理し、違法行為を抑制するために必要な新たな法律や条例の制定につなげていきたいとの期待を示した。

Testimonial from
Prof. Dr. Eko Sri Wiyono
インドネシア・IPB大学(ボゴール農科大学)准教授/研究者
インドネシアは国土の約66%を海域が占める島嶼国家であるため、インドネシア各地に分散している小規模漁業におけるウナギ資源の管理が大きな課題となっています。

左からエコ博士、右にドニー氏。インドネシア代表者とともに撮影。
©SEAFDEC事務局
エコ・スリ・ウィヨノ氏は、多数の島々から成るインドネシアの広大な地理的条件と、各地に分散する小規模漁業の存在が、データ収集および資源管理を困難にしているという大きな課題を指摘した。彼にとって最も印象的だった経験は、海外の専門家と議論を重ね、ウナギの資源評価モデルを検討・決定したことであった。
本プロジェクトは、ウナギ類と類似した行動特性を持つ魚種の漁業に対する新たな資源評価モデルの開発への着想を与えたものであり、今後はこれらの成果を大学における学生への教育の場で普及させていく予定である。

Testimonial from
Mr. Dony Armanto
インドネシア海洋水産省
インドネシア全土において、特にウナギ漁業者や地方政府を対象とした、さらなる能力開発(キャパシティ・ビルディング)が必要です。資源管理を支援するため、参加の拡大と知識の向上につながる能力強化が求められています。
ドニー・アルマント氏は、ウナギ事業を持続可能なものとするための漁業者の能力不足が、自国における最大の課題であると指摘した。彼にとって、DNA解析や、実験室設備を必要としない迅速な蛍光識別法によるシラスウナギの識別技術が最も有益であった。
同氏は、インドネシア全土において、特にウナギ漁業者および地方政府を対象とした、さらなる能力向上(キャパシティ・ビルディング)を行い、資源管理への参加を促すことを示した。

Testimonial from
Dr. Phuc Dinh Phan
ベトナム水産養殖研究所 副所長
本プロジェクトで得られた知識は、ウナギの資源評価方法や漁獲漁業の把握・識別を学ぶ上で、私自身および我が国にとって非常に有益なものでした。これらの知識を活用し、我が国におけるウナギ資源の強化と保全に役立てていきたいと考えています。

会議において、右側のフック博士が同僚とともにベトナムの状況を発表している様子。
©SEAFDEC事務局
フック・ディン・ファン氏は、ベトナムにおけるウナギ資源管理の主な課題として、自然水域におけるシラスウナギを捕まえる活動を管理しきれておらず、漁業ルールの執行も不十分なため、過剰な漁獲がの懸念されている。
同氏は、本プロジェクトを通じて得られた知識が、国家レベルの資源保全の取組において不可欠であると評価している。その専門知識には、資源評価、種の識別、ウナギ漁獲漁業の持続可能な管理手法など、本プロジェクトで得た知識は国家レベルの資源保護に不可欠なものだ。今後は、これらの知見を戦略的に活用し、ベトナム国内のウナギ資源の強化と保全を進めていく予定である。

Testimonial from
Ms. Ni Komang Suryati
SEAFDEC 内水面漁業資源開発・管理部(IFRDMD) JAIF-ウナギプロジェクト 活動リーダー
6年間にわたる数多くの成果の中で、私たちはウナギ資源をモニタリングするための地域共通標準手法という考え方を確立することに成功しました。この手法は、ASEAN加盟国全体で一貫して適用することが可能です。

会議において、コマン氏がSEAFDEC/IFRDMDの調査結果を発表している様子。
© SEAFDEC事務局
実施機関を代表するニ・コマン・スリヤティ氏は、各国で異なる自然環境や漁業のやり方がある中で、ASEAN加盟国(AMS)間における調査方法を一つにまとめる(調和させる)ことが最大の課題であったと述べた。その結果、ASEAN全体で統一して使えるウナギ資源をモニタリングするための地域共通標準手法の概念を開発できたことが、最大の成果だ。
さらに同氏は、資源評価手法が、科学的に正しい手法であることはもちろん、現場の調査員や漁業者が「無理なく続けられる」方法であることが重要だと学んだ。
本プロジェクトを通じて育まれた協力体制により、ASEAN加盟国(AMS)は、ウナギ資源管理の「最初の一歩」を踏み出すためのツールと知識を備えることができた。科学的な資源評価手法の開発から、地域協力の促進、さらにはシラスウナギの識別やデータ収集に関する能力強化という強固な土台が築かれたことで、ASEAN地域における熱帯性ウナギの持続可能な利用と長期的な保全が期待される。
この取り組みは、日ASEAN統合基金(JAIF)を通じた日本政府の長期的かつ戦略的なビジョンを示すものであり、東南アジア全域において強靭で持続可能な農業・食料システムの構築を目指している。プロジェクトの成果は、ASEAN食料・農業・林業分野別計画(2026~2030年)や「日ASEANみどり協力プラン」といった将来の枠組みにも直接貢献している。
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資金援助の枠組み


